【ポエム】雨を待つ

何もしたくない土曜の午後。ベッドに寝転がりぼんやりしている。

 

やらなければいけないこと、やりたかったことはたくさんある。部屋の片づけ、掃除機がけ、詰め込みすぎたクローゼットの整理、やたら溜まった書類の処分、週末に読みたかった本、買ったばかりのマンガの新刊、友達に誘われたオンラインゲーム。何も手を着けず、無為に時間が流れていくのを眺めている。

 

 窓の外は初夏の夕方にしては薄暗い。今日は強い雨が降るという予報が、一日が終わりに傾いた今になって追いついてきた。不機嫌に唸る雷はまだ遠い。空気の湿り気が重さを増し、昼の蒸し暑さを忘れたように風が涼しい。

名前のわからない鳥が何かをまくしたてている。と思ったらぴたりとやめ、次に聞こえてきた声はずいぶん遠ざかっていた。雨から逃げていくのだろうか。

 

空は青みがかった灰色。網戸ごしだとなおさら鈍く澱む。どしゃぶりの雨が降るには暗さが足りない。

雷は待っていてもなかなか近付いてこない。雨はどこまで来ているのか耳をすませても台所換気扇の音しか耳に入らない。

 

雨を待っている。空気の水気増していくのを感じながら。いっそ外に飛び出して、全身を雨に打たれてずぶ濡れになることを想像しながら。

雷はまだ遠い。雨の音は聞こえない。気持ちだけがはやる。時間を手繰り寄せて、この窓の外に雨を。濡れた土の匂いを、地面を叩く無数の雨粒を、咽せるような湿気を、水彩画のようにぼやけてけぶる景色を。

何もかも投げ出して、ベッドの上で壁にもたれかかり、吐き出し窓の大きな網戸越しに、身体中の感覚をすませて。

 

雨を待っている。ただそれだけの週末の夕方を過ごす。

 

 

(なお一時間待っても降らなかったので飽きた模様)